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1秒迷ったら、負ける。出汁専門店「京都離宮」が教えてくれたこと。

インタビュー記事

素材はある。でも、どう売るかが、わからなかった。 

 創業50年以上の歴史を持つ和食レストラン「美ね寅」を母体に、2023年に新ブランド「京都離宮」をスタートさせた宮永さん。
もともと飲食一本でやってきた分、商品販売の経験がほとんどなかったというのが最大の課題だった。
「飲食だったので、商品をあんまり販売してこなかったんです。商品展開をするというのが、わかってるようでわかってない、という状態でした。消費者目線は大きいんですが、じゃあそこで戦っていくにはどうしたらいいか、が見えていなかった」
出汁と出し巻き卵という「素材」はある。でも、どう売るか、どう見せるか、どう届けるか——その答えを持たないまま、ブランドを立ち上げた。

自分で想像できない角度からのアプローチ  

 セメントとの出会いは、知人からの紹介がきっかけだった。当時セメントとすでに取り組みをしていた方から話を聞き、宮永さんが窓口として相談を重ねていく中で、信頼が生まれた。
決め手になったのは、提案のクリエイティブな角度だった。
「一番最初にすごいと思ったのは、出し巻きをただ販売するんじゃなくて、キャラメルケースに入れて販売しませんか、という提案をもらったことです。そういう発想が自分たちには全然なかったので、単純にすごいと思いました。高級感があるし、イラストも綺麗だったし」
「自分で想像できない角度から提案してもらえるのが良かったです。これを完璧に形にできたらめちゃくちゃ売れそう、というイメージが持てた」
他社との比較について、加藤代表もこう語る。
「提案のクオリティが圧倒的でした。出していただいたラフのどれも採用したいよね、という感じだったんです。今まではそういう経験がなかった」

デザインが好き、お願いしたい。でも、ペイできるのか。  

 率直に言えば、費用面のハードルが最も大きかったと宮永さんは振り返る。
「今の自分たちの規模でセメントさんにお願いするのは、正直、少し身の丈に合っているかどうか……という迷いはありました。販売数量がどうしても多く取れないので、デザインにこれだけかけてペイできるのかという部分で、どうしても葛藤が生まれてしまう」
「デザインも好き、志水さんにお願いしたい、でも作っても作ってもペイできないかもしれない」——その葛藤を抱えながらも、前に進み続けた。

戦う土俵が、変わった。  

ビフォーとなる実績がないため比較は難しいと前置きしつつも、宮永さんは**「戦う土俵が変わった」**という表現でその変化を語った。
「思っていたとおりのお客さんの反応が来るようになりました。値段帯を少し上げての販売でも、ネガティブな反応をするお客様がいなかった。これはすごく良かったです」
「出し巻きも、今日ちょっとお友達の家に持っていくわ、って買ってくださる方が出てきて。その辺で売ってる出し巻きと戦っているわけじゃなくて、女性が喜ぶ、女性のための商品ですっていう立ち位置でスタートできたのは良かったと思います」
さらに大きな変化として、京都駅への出店をきっかけに百貨店やポップアップのオファーが急増した。
「京都駅に出店してから、百貨店とかからのお声がけが急激に増えました。やっぱりバイヤー同士って仲がいいから、情報が回っているんだと思います」
だしスパイス瓶のパッケージをリニューアルしたタイミングでは、テレビに取り上げられたこともあり、1日で約200万円の売上を記録するほどの反響があった。
「通知がすごすぎて怖かったです。見るたびに10件、15件と増えていくので(笑)。テレビって本当にすごいんだなと思いました」
銀座シックスや阪急梅田本店でのポップアップ、台湾での展開など、外に出ていくたびに「どこでもお客さんの反応が変わらない」ことが自信になっているという。
「台湾のインフルエンサーの方に可愛いと言ってもらったりもして。自分が思っている目線の高さに、お客さんも一緒にいてくれる、という感覚がすごく嬉しかったです」

できるかできないかを考えた瞬間、1秒遅くなる。  

 次のフェーズとして宮永さんが見据えているのは、出汁を「健康食品」として確立させることだ。
「出汁を使ったら健康になれる、というエビデンスを取りに行きたいんです。今、東洋大学さんと共同研究をしていて、アスリートでも学生でも一般の方でも使える可能性がある。うちは出汁が主役なので、その出汁を主役にした新しい市場を作りたい」
「何でも応募する、とりあえずやってみる」を体現してきた宮永さんが、変わりたいけれど踏み出せない事業者へ向けて、こんな言葉を贈った。
「勇気を出すだけ、という感じですよね。感覚を変えるというか、一歩上で生きていきたいと思ったら、その一歩先の感覚を持っていかないと、どこが一歩先なのかもわからない。できるかできないかを考えた瞬間に、答えが1秒でも遅くなったら選んでもらえなくなる可能性がある。だからとりあえずやります」

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